2021年度秋冬プログラムりんご前線 — Hirosaki Encounters
※臨時休館に伴い、2022年1月19日(水)に閉幕しました。
りんごのテロワール(土壌)・弘前―様々な出会いと遭遇の磁場
春夏プログラム「りんご宇宙」に続く第2部となる本展は、りんごのテロワール(土壌)としての「弘前」の地に注目し、弘前ゆかりのアーティストたちの作品や当地との出会いで生まれた作品などで構成されます。
「前線」は、異なる気団の境界・交線で起こる大きな気象の変化や、運動の第一線といった意味を持ちます。この言葉をキーワードに、当地との出会いや異なる世界との交差、家族の歴史を通した自らのルーツの発見といった様々な遭遇や対峙・交流から生まれるエネルギーなどについて考えます。また、自然と人工、現実と空想、近代と現代、東洋と西洋、過去と現在といった関係から、改めて風土性や場の力に関する思索を促します。
本展では、イギリス出身のケリス・ウィン・エヴァンスが弘前でりんごに出会ったことから発想し、生み出した巨大なネオン彫刻を、春夏プログラムから継続して展示します。一方、新たに、弘前と様々な接点を持つ、世代も背景も大きく異なる5名のアーティストたちの絵画、彫刻、ドローイング、映像、インスタレーションなど多様な作品群を、美術館空間に合わせて展示・紹介します。また、毎回多角的なアプローチで地域性や創造的魅力を再考する「弘前エクスチェンジ」では、これまで幅広い特集を通して津軽という地域を考察してきた雑誌『津軽学』の活動や、弘前の近代建築と街並みにも光を当てます。
ゲスト・キュレーター 三木あき子
アーティスト
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Photo: Mie Morimoto
小林エリカ
1978年、東京都生まれ、東京都在住。
目に見えない物、時間や歴史、家族や記憶、場所の痕跡から着想を得た作品で知られる。小説に散りばめられたフィクションとドキュメンタリーの要素が、私的なナラティブと社会のリアリティーの狭間で行き来する光景を追体験するようなインスタレーションを国内外で発表。2014年には小説「マダム・キュリーと朝食を」(集英社)で、第27回三島由紀夫賞・第151回芥川龍之介賞にノミネートされ、2020年、小説「トリニティ、トリニティ、トリニティ」(集英社)で第7回鉄犬ヘテロトピア文学賞受賞。近著は「最後の挨拶 His Last Bow」(講談社)。 -
Photo: Thomas Chéné
斎藤麗
1980年、青森県弘前市生まれ、パリ在住。
フォトグラヴュール、彫刻、タイトル、ドローイング、パフォーマンスなど、様々なテクニックを組み合わせ、誰も見たことのない、けれどどこかで見た何かを思い起こさせる「風景」としてのインスタレーションを構成する。しばしばギリシャ神話やイタリアのルネサンス絵画、日常の細部や宇宙的リズムに着想を得たその風景は、ときに古代のモザイクや、南極の流氷下深海の不可視的な世界にも似た、新しいシナリオを空間に織りなす。ポンピドゥーセンターのウェブシリーズMon Oeilに《Paysages délicieux》から5つのエピソードが紹介されている。初めての書籍をIs-Land éditionから2021年内に出版予定(仏英日語)。 -
佐野ぬい
1932年、青森県弘前市生まれ、東京都在住。
1950年代の制作初期から一貫して多くの青を基調とした作品を描き、「青の画家」として知られる。リズムをともなう色面の構成を通して、青の豊かな表現を展開。カンヴァスに描かれた絵画作品の他、壁画やステンドグラスなど公共空間のための作品も制作している。1955年、女子美術大学芸術学部洋画科卒業。1994年、青森県褒賞文化功労者。1996年、パリにて個展 (00、03年)。2001年、青森県文化賞受賞。2007~11年、女子美術大学学長。2012年、瑞宝中綬章受章。2015年、弘前市名誉市民。現在、女子美術大学名誉教授、新制作協会会員。 -
写真提供:青森公立大学国際芸術センター青森
塚本悦雄
1962年、熊本県生まれ、青森県弘前市在住。
自然に対する人間の行為をテーマに、彫刻をつくることもその一部と捉え、粘土・石・木などを素材とした具象彫刻やドローイングをオーソドックスな手法で制作する。近年は津軽の自然や文化に関する身近な存在をモチーフとする作品を中心に発表している。 -
村上善男
1933年、岩手県生まれ。2006年、同地にて没。
緻密な計算による画面構成と抑制の効いた色彩を持つ理知的な作風に特徴をもつ。1950年代以降、生涯にわたり東北を拠点に精力的に活動し、1960年からは注射針を主媒体としたシリーズを制作。その後、気象図、貨車を種別する記号を主題に用いたシリーズへと展開した。1982年、弘前市に移り、弘前大学で教鞭を執る傍ら、古文書や染め布などを画面に貼りつけた「釘打ち」シリーズを制作。詩の創作も行うなど、多岐にわたる作品を残した。 -
Photo: Ali Janka
ケリス・ウィン・エヴァンス
1958年、英国、ウェールズ生まれ。英国、ロンドン在住。
1980年代から実験的な映像作品を手がけ1990年代以降はネオン、音、鏡などを用いて制作。哲学や音楽、天文学、物理学など多様な分野に基づく作品は、国際的に高い評価を得ている。各国の主要 美術館で個展を行っており、第50回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展ウェールズ館代表(イタリア、2003年)。ヘップワース彫刻賞受賞(英国、2018年)。 -
空間構成:蟻塚学
建築写真撮影:柴田祥
3Dアーカイブ
展覧会のみどころ
1.弘前と様々な接点を持つ、幅広い世代のアーティストたちの活動を紹介
弘前市の名誉市民である洋画家の佐野ぬいをはじめ、現在はパリを拠点に活動する弘前出身の斎藤麗、さらに、父親が弘前生まれというルーツをもち、小説執筆や漫画家、アーティストとして多彩な活動を展開する小林エリカなど、弘前ゆかりのアーティストたちの活動を紹介します。
2.煉瓦倉庫を改修した展示空間に合わせた新作を含む展示
美術館のユニークな空間にあわせ、新作も含めた展示を行います。村上善男の展示は、故人を良く知る関係者の協力により「もし作家が生きていたら」という仮定に基づき、作品と美術館の空間との対話をはかるとともに、現在の視点から改めてその創作活動について考えます。
3.地域誌『津軽学』の活動や、弘前の建築、街並みにもフォーカス
「弘前エクスチェンジ#04」では、2005年より幅広い特集を通して津軽という地域を考察してきた雑誌『津軽学』を、「場の力」や「地の記憶」という新たな視点から振り返ります。さらに、弘前の風景を特徴づける近代建築を写真家の柴田祥が新たな視点で撮り下ろします。また、本展の会場構成には、弘前を拠点に活動する建築家の蟻塚学が参加します。
4.自由な展示のリズムと空間の使い方、異なる切り口による作品解釈
当館のために制作されたケリス・ウィン・エヴァンスの巨大なネオン彫刻は、第一部から継続して展示されます。本作を2つの異なるテーマの展覧会で展示することで、自由な展示のリズムと空間の使い方を模索するとともに、様々な角度から多様な作品解釈を促します。
「りんご前線—Hirosaki Encounters」ブックレット
美術館隣のミュージアムショップでお買い求めいただけます。
開催概要
- 会期:2021年10月1日(金)— 2022年3月13日(日)
※臨時休館に伴い、2022年1月19日(水)に閉幕しました。
休館日:火曜日
※ただし11月23日(火・祝)は開館、翌11月24日(水)は休館。
※12月26日(日)〜1月1日(土・祝)は休館
開館時間:9:00-17:00(入館は閉館の30分前まで) - 主催:弘前れんが倉庫美術館
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特別協賛:スターツコーポレーション株式会社、株式会社青南商事
協賛:株式会社ラグノオささき、株式会社アップルコミュニケーションズ、株式会社NTTファシリティーズ、株式会社津軽りんご市場
後援:東奥日報社、デーリー東北、陸奥新報社、青森放送、青森テレビ、青森朝日放送、NHK青森放送局、エフエム青森、FMアップルウェーブ、弘前市教育委員会 - 観覧料[税込]:
一般 1,300円 (1,200円)
大学生・専門学校生 1,000円 (900円)
※()内は20名様以上の団体料金
以下のサービスをご利用の場合にも、団体料金が適用されます。詳しくは各リンクをご参照ください。
○提携駐車場 詳しくはこちら
○わにサポ 詳しくはこちら
※以下の方は無料
・高校生以下の方
・弘前市内の留学生の方
・満65歳以上の弘前市民の方
・ひろさき多子家族応援パスポートをご持参の方
・障がいのある方と付添の方1名
・弘前市内の5つの大学に在籍する学生(先着1,000名)
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