AOMORI GOKAN アートフェス2024 メイン企画弘前エクスチェンジ#06「白神覗見考(しらかみのぞきみこう)」
会場:弘前れんが倉庫美術館、cafe & shop BRICK、ギャラリーまんなか、HIROSAKI ORANDO
弘前エクスチェンジ#06「白神覗見考」と題して、白神山地をテーマにリサーチ・プロジェクトを実施します。本企画は、当館を含む⻘森県内5つの美術館・アートセンターを中⼼に⾏われる「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」 [会期:2024年4⽉13⽇(⼟)−9⽉1⽇(⽇)]のメイン企画の一つであり、狩野哲郎(かのう てつろう)、佐藤朋子(さとう ともこ)、永沢碧衣(ながさわ あおい)、 L PACK.(エルパック)の4組のアーティストたちが、それぞれの視点で、作品展示をはじめワークショップやイベントなどを実施します。
白神山地とは、青森県南西部から隣県・秋田県西北部にまたがる山岳地帯の総称で、このうち原生的なブナ林で占められている区域(約17,000ヘクタール)が、1993年にユネスコにより世界自然遺産として登録されました。白神山地は多種多様な動植物の生息・自生が保たれている場でありながら、弘前市を含む津軽平野(青森県西部)を流れる岩木川の源流の地でもあり、人々が生活する市街地とも地続きの土地です。本企画では、参加作家たちと共に古くから人々の生活を支えてきた川をたどり、その源となる山々の姿に目を向けることで、世界遺産登録前後もそこに息づく動植物の存在や、山村の営みの変遷、近代化といった山とともに生きる人々の生活の変化にも考えを巡らせます。
参加作家の狩野哲郎は、白神山地が世界自然遺産となったことで、それまでそこに暮らしていた人や動物にどんな変化が生まれたのかを探り、立体作品を中心に美術館内外で展開します。永沢碧衣は、自身の狩猟経験をもとに制作した絵画作品を展示します。佐藤朋子は会期を通じて来場者をゆるやかに巻き込みながら、長期的なリサーチの過程を公開しアップデートし続けていきます。L PACK.は、弘前市では馴染み深い夏の祭りである「宵宮」に触発されて、展覧会期末の3日限定のイベントとして体験型作品を公開します。
私たちは人間同士の社会的環境だけでなく、自然環境とも相互に関係し合いながら存在しています。人間と自然という二項対立的な見方や既存の価値観を脱し、新たな関係性の構築を試みる作家たちの活動は、人間中心ではない世界の捉え方を提示し、持続可能な社会に向けて、他者との共存の多様なあり方を想像させます。固定概念をくつがえし、感覚を拡張するような複数の活動を体感することで、いつもの風景が異なるものに見えてくるきっかけとなることでしょう。
アーティスト
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Photo: Takashi Arai
[展示]狩野哲郎
1980年宮城県生まれ、神奈川県在住。2007年東京造形大学大学院造形研究科修了。2011年狩猟免許(わな・網猟)取得。生物から見た世界/狩猟/漁業/測量などを軸として国内外でリサーチ/滞在制作を行う。美術館のライブラリースペースや街中各所に作品を展示し、白神山地が世界自然遺産となったことで人や動物にどんな変化が生まれたのか、青森のさまざまな自然や文化との交流を通じて探る。
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Photo: 大野隆介
[リサーチ]佐藤朋子
1990年長野県生まれ、神奈川県在住。2024年は5月まで台湾、10月まで韓国を拠点にしている。2018年東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。 レクチャーの形式を用いた「語り」の芸術実践を行っている。「山村の近代化・人の営み・歴史」をキーワードに、弘前を訪れ、リサーチの成果を随時公開。
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[展示]永沢碧衣
1994年秋田県横手市生まれ、同地在住。2017年秋田公立美術大学アーツ&ルーツ専攻卒業。秋田に在住しながら狩猟免許(第一種銃猟、わな)を取得し、東北の狩猟・マタギ文化に関わりながら“ 生命の根源 ”を辿り、“人と生物と自然 ”の関係性を問う絵画作品を制作している。「山の命・山の狩猟」をキーワードに、釣りや狩猟といった、作家の実体験に基づいて制作された絵画作品の展示と、自身の生活と密接な関係にある制作の様子を紹介するトークイベントを実施。
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Photo: Koichi Tanoue
[イベント]L PACK.
小田桐奨(1984年青森県平川市生まれ)と中嶋哲矢(1984年静岡県生まれ)によるユニット。静岡文化芸術大学空間造形学科卒。アート、デザイン、建築、民藝などの思考や技術を横断しながら、最小限の道具と現地の素材を臨機応変に組み合わせた「コーヒーのある風景」をきっかけに、まちの要素の一部となることを目指す。展覧会期末の3日間、宵宮や屋台など地域の身近な文化から着想された体験型の作品を発表予定。
見どころ
1. 白神山地をきっかけに複数の視点が交流する場
2023年に、白神山地は世界自然遺産に登録されて30周年を迎えました。本プロジェクトの参加作家たちは、白神山地の玄関口といわれる西目屋村でのリサーチや関係者によるインタビューなどを経て、会場に合わせた作品を制作し展示します。なかでも佐藤朋子は、現在拠点としている台湾と韓国、そして弘前、白神山地を巡り、会期中を通して取り組むリサーチプロジェクトを「向こう側研究会」と名付け、その過程を会場にて随時更新し公開します。白神山地を入口に、近代化による山村の営みの変遷や、自然との共存の道筋を知ることで、人間の生活環境の転換について考え得る複数の視点を提示します。会期を通じてさまざまな場面で、作家と来場者、あるいは来場者同士の視点の交換・交流を体感できる場を創出します。
2. まちなかにひろがる作品展示
狩野哲郎による作品は美術館のほかに、美術館建物前の土淵川吉野町緑地、弘南鉄道中央弘前駅舎内の展示スペース(ギャラリーまんなか)、HIROSAKI ORANDOのカフェスペースなど、弘前市内の数か所に展示されます。狩野哲郎は既製品や自然物などを組み合わせて空間を構成し、動物たちにとって価値がある彫刻かどうかを考えることで、人間とは異なる視点へのアプローチを試みます。狩野の作品は人間にとっては美術作品でありながらも、同時に動物たちの世界認識を知る手がかりとなります。本企画では、モビール型の作品や、鳥や虫など人間以外の生物にとっての集合住宅のような作品を制作します。来場者は街を周遊しながら、弘前の風景に溶け込む作品との出会いを通じて、見慣れた風景がいつもと違って見えてくることでしょう。
3. 会期最後の3日間に体験型作品の屋外イベントを開催
2024年8月30日(金)から9月1日(日)の3日間限定で、美術館建物前の緑地を会場に、「AOMORI GOKANアートフェス 2024」共通企画の栗林隆《元気炉》の展示とあわせて、L PACK.による体験型作品《いっしょくたにへば たげめぐなるはんで When you put them all together, it’s a complete disaster.》をイベント形式で公開します。
L PACK.が発表するのは、弘前市では馴染み深い夏の祭りである宵宮や、路上で見かける移動販売のアイス屋から発想された屋台です。その屋台で提供される一風変わったメニューを注文すると、思いがけないコミュニケーションが生まれるかもしれません。
開催概要
- 会期:2024年4月6日(土)〜 2024年9月1日(日)
※会場ごとに開館日・開館時間が異なります
※ギャラリーまんなかでの展示は4月24日(水)〜5月7日(火)の期間はご覧いただけません
【弘前れんが倉庫美術館】
住所:弘前市吉野町2-1
休館日:火曜日
※ただし、2024年4月23日(火)、4月30日(火)、8月6日(火)は開館
開館時間:9:00-17:00(入館は閉館の30分前まで)
【CAFE & SHOP BRICK】
住所:弘前市吉野町2-11(弘前れんが倉庫美術館隣接)
休館日:火曜日
※ただし、2024年4月23日(火)、4月30日(火)、8月6日(火)は開館
開館時間:9:30-17:30
【ギャラリーまんなか】
住所:弘前市吉野町1-6 中央弘前駅構内
展示期間:4月6日(土)− 4月23日(火)、5月8日(水)− 9月1日(日)
開館時間:弘南鉄道大鰐線の始発から終電 ※ギャラリーの外からご鑑賞ください。スタッフが在廊している場合はギャラリー内にお入りいただけます
【HIROSAKI ORANDO(cidre&café POMME/MARCHÉ)】
住所:弘前市百石町47-2
開館時間:[日・月・火]12:00-18:00
[金・土・祝]12:00-16:00、18:00-21:00
休館日:水・木、祝翌日
※開館時間、休館日は変更になる場合があります。最新情報は「cidre&café POMME/MARCHÉ」のInstagramアカウントをご確認ください
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主催:弘前れんが倉庫美術館
特別協力:山口積恵
協力:永井温子(株式会社Ridun 代表取締役)、弘前シードル工房 kimori
後援:東奥日報社、デーリー東北新聞社、陸奥新報社、青森放送、青森テレビ、青森朝日放送、エフエム青森、FMアップルウェーブ、弘前市教育委員 - 観覧料:無料
※美術館内展示室のみ「蜷川実花展 with EiM:儚くも煌めく境界 Where Humanity Meets Nature」の観覧券が必要