HIROSAKI EXCHANGE#05「ナラヒロ」EXHIBITION

佐々木怜央
雪の様に降り積もる/2006年の記憶から

2022年9月17日(土) - 2023年3月21日(火)
  • 佐々木怜央「雪の様に降り積もる/2006年の記憶から」展示風景
撮影:長谷川正之

    佐々木怜央「雪の様に降り積もる/2006年の記憶から」展示風景
    撮影:長谷川正之

  • 佐々木怜央「雪の様に降り積もる/2006年の記憶から」展示風景
撮影:長谷川正之

    佐々木怜央「雪の様に降り積もる/2006年の記憶から」展示風景
    撮影:長谷川正之

  • 美術館になる前の煉瓦倉庫で三度開催された「奈良美智展」をきっかけに
    地域の人々にひらかれた創造性のひとつの形を、展示によるアウトプットを通して紹介します。

    佐々木怜央は、高校2年生の時、2006年の展覧会「YOSHITOMO NARA + graf A to Z」のボランティアに参加しました。
    奈良美智とgraf、ボランティアの人々や多くのゲスト作家によって作り上げられた展覧会の現場に看視スタッフとして関わり、
    アートを通して大勢の人とつながる可能性を感じたといいます。
    幼少期からものづくりに強い関心を抱きつつも、当時、進学先を理系大学か美術系大学かで迷っていたという佐々木は、
    この経験が大きなきっかけとなり、アーティストの道へと進みました。
    「もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?」の会場内で、ガラス素材を用いて制作する作家の現在の表現を紹介しています。

    佐々木怜央インタビュー(インタビュアー:「小さな起こりリサーチ」メンバー)

     

    作家ステートメント

    奈良美智さんの作品を注意深く長い時間見続けたのは私が高校 2 年生の 8 月の事だった。
    当時は大学の進学先を農学部のある大学に絞ろうと考えていたが、美術大学を意識する様になったのも丁度この頃だったと記憶している。
    「YOSHITOMO NARA+graf A to Z」という展覧会にボランティアスタッフとして参加する事となったが、
    会場には三沢厚彦さんや ヤノベケンジさんをはじめゲストアーティストの作品も展示しており、
    お互いの作品が共鳴し合っている展示空間を肌で感じる事が出来た。
    現在に至るまで美術館でその頃見ていた作品と再会する事があり、その度に当時の吉井酒造煉瓦倉庫で経験した事を鮮明に思い出す。
    会場に集まった人々の熱気や雨の日の高い湿度の記憶だけではなく、展示された作品や立ち並ぶ小屋の細部を思い出すのは、
    それほど記憶の深い場所に刻まれているからなのだと思う。

    私は現在東京の台東区にアトリエを持ち、素材の研究や制作活動をおこなっている。
    展示の合間を縫って度々青森に帰省し、子どもの頃から通っている自然に足を運んで散策をする。
    私が主に用いるガラス素材の氷の様な質感は、子どもの頃冬に集めた氷柱の様であり、
    ものを作る行為は自然の中で日々感じるエネルギーや採集したものの観察や工作の延長線上にある。
    この様な制作活動の背景にある深層心理が、青森県で生まれ育った人、もしくは雪国で生まれ育った人々と感覚を共有出来るのではないかと思っている。
    アトリエの中で制作をしていても、子どもの頃ストーブを背負って黙々と絵を描いたり折り紙を折っていた頃の自分自身と重なる感覚があり、
    作家活動の原動力が子どもの頃から続く好奇心や創作意欲に起因しているのだと感じている。

    杜氏だった私の祖父は、吉井酒造煉瓦倉庫で研修を受けたと聞いている。
    無口だった私の祖父だが、杜氏としての仕事に関わる厳しさや手間を惜しまない真面目な姿勢を体現していた。
    退職後も度々酒蔵に連れて行ってくれたり、丁寧な庭仕事を通年行っていたり、いま思い返しても見習うことが多い。
    祖父は居間に掛けられた柱時計のネジを定期的に巻いていて、実家からの電話越しにその時計が時刻を知らせる音が聴こえると、
    東京と黒石の間の600kmの距離が一瞬0kmに縮まったように感じ、祖父がネジを巻き続けているのだと分かった。
    弘前れんが倉庫美術館に初めて訪れた時、16歳だった私が「A to Z」展でボランティアスタッフとして関わっていた頃の面影を色濃く残していると感じた。
    そのことは、美術作家を意識し、志し始めた当時の感情も想起させた。

プロフィール

  • 佐々木怜央

    1990年青森県黒石市生まれ。東京藝術大学大学院修了後、株式会社ミナ勤務。2018年より主にガラス素材を用いて作家活動を開始し、同年、弘前市立百石町展示館で個展を開催。以降ラトビアや沖縄、台湾など、国内外でのリサーチや制作、展示活動を行う。乗り物やロボット、動植物など、作家の幼少期から目にしてきたモチーフに自身の世界観を投影しながら、物語性のある作品を展開する。

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